2006年1月20日 06:34

FF11の音楽 ~ 2006年の展望(続)

ご存知のとおり、2005年は、FF11のサービス開始以降初めて、
「拡張ディスクが発売されなかった年」でした。
しかし、じつは、「FF11の音楽」という面から見ると、
2005年は、サービス開始以来、最も大きなターニングポイントでした。
アレンジアルバム「THE STAR ONIONS」の発売もそのひとつですが、
今回取り上げたいのは、ゲーム中で流れる音楽についてです。
2005年から、BGMのデータ形式が変わり、
そのため、「Distant Worlds」という、歌曲の導入も可能になったのでした。

もともとFF11は、PS2向けに開発されていたため、
FF10などと同じ仕組み、つまりPS2に内蔵されている音源で音楽を鳴らせるように作られていました。

内蔵音源で鳴らすというのは、MIDIに近いところがあって、
音符や音楽記号の羅列をデータ化し、演奏家である「音源」がそれにもとづいて演奏し、音としてスピーカーから出るようになります。
普通にMIDIデータを作るのとちょっと違うのは、内蔵音源が実際に鳴らす音色、楽器も作ることができますので、
この曲のフルートの音色はちょっと切ない感じにしよう! とか、金だらいが落ちてきて頭に当たる音を使おう! とか思ったら、
そういう音色を録音(サンプリング)などをして作って、曲のデータと一緒に入れておけば良いわけです。

ただ、FF11にはWindows版もあるわけですが、パソコンの中にはもちろんPS2の音源は入っていません。
なので、Windows版の場合、おそらくPS2で鳴らした音を録音して、それをゲーム中で再生して曲を流していると思われます。
つまり、PS2版とWindows版では音を鳴らす仕組みそのものが違っているということです。

しかし、2005年、FF11は、PS2版・Windows版で共通して使える音楽データ形式を採用しました。

田中弘道さん(FF11プロデューサー)「歌って、バージョンアップで入れようと思ってもいままでは容量の問題でできなかったんです。でも、"ATRAC3"という、軽い容量ですむドライバーを採用したので。たまたま、入れられるようになったねと話していたら、植松さんが歌モノを書きたいと......おっしゃって。」

エンターブレイン発行「ヴァナ・ディール通信 バストゥーク共和国特集号」より

ATRAC3というのは、MP3やOGGなどと同じ、音声の圧縮形式です。
つまり、FF11でも、2005年に追加された楽曲からは、
曲データを「音符や音楽記号の羅列」という形ではなく、「音の波形」という形で持つようになったということです。
(といっても、以前からある楽曲については、以前と同じ方法で発音されているはずです)

これは、MIDIからMP3に変わったとか、着メロから着うたに変わったぐらいの意味があります。
つまり、利点としては、(作り手の意欲と手間次第ですが)どんな音でも使いたい放題ということです。
だからこそ、「Distant Worlds」という、「うた」をゲーム中に流すことができるようになったわけです。
(ちなみに、FF11はもうひとつ、「FFXI Opening Theme」という歌曲がありますが、
 この曲は、インストールディスクを挿入すると見られるムービーの中で使われているだけで、
 ゲームとは完全に分離した形で使われています。)
あと、「同時発音数」を気にする必要がないので、音楽プレイヤーと同じ感覚で、
クロスフェード(曲を切り替える際に、前の曲がフェードアウトするのと平行して次の曲がフェードインしてくる)などが
自由にできるようになるという利点もあります。
(これは、サウンドドライバー...音を出すためのプログラム...の仕様によるでしょうけれど)

欠点としては、MIDIとMP3の違いを考えて頂ければわかるように、データ容量が大きくなる点があります。
FF11の場合は、ダウンロードによってデータを更新することがあるので、重要な問題です。
そのために、MP3やATRAC3などの圧縮方式が重要になるわけですが、
ATRAC3を選んだ理由は、MP3などよりも容量を小さくできることと、データを解析されにくいという理由もありそうです。

じつは、上述の通り、Windows版では最初から似たような方法で曲を流していたわけですが、
機種にかかわらず同じ曲・同じ音を出さなければいけないという観点から、
ある意味ではPS2の内蔵音源が足かせになっていた部分が、取り払われたと言うこともできるでしょうか。

ちなみに、他のスクウェア・エニックスのゲームでも、2005年から、音声に一部ATRAC3形式を導入したものがあるようですね。

あと、こまかいことを言うと、内蔵音源でも、録音した歌をひとつの楽器・音色とみなすことで、歌詞つきの歌を流せます。
これは、FF7の「片翼の天使」のコーラスパートですでに取り入れられている手法ですが、
FF11でも、以前から、歌ではなく楽器のワンフレーズや、なかには1曲をまるまる録音(サンプリング)して流しているらしき曲もあり、
そうすると、ATRAC3を使うのと何が違うのか? ということになって、門外漢の籠入りにはよくわかりません。メモリ容量の問題?
なんか、そのへんに焦点をあてたインタビューとか、どこかでやっていただけないですかねー。

さて、以上をふまえて、2006年の展望に、ひとこと付け加えたいと思います。
今後、FF11に歌モノがさらに加わるのかどうかはわかりませんが、
今年発売予定の「アトルガンの秘宝」の音楽では、全面的にこのATRAC3形式を使ってくる可能性が高いでしょう。
となると、生の楽器をふんだんにつかった、またひと味違った音楽になるのかどうか...?
そのへんは、手間と作り手の考え方次第ということですけれど。
楽しみに待ちたいと思います。あれ、展望じゃなくなっちゃった。

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コメント(2)

マップデータのほかに音声データも容量食いますから
メディア配布のタイミングで方針転換、というのはありそうですね。
ほかのエリアとの整合性から、露骨に音質を変えにくい気もしますけれど…。

参考程度に、最近EQ2の無料体験版をインストールしてみたのですが
(結局グラフィックボードの問題で動かないオチ…)、
mp3ファイルでどしどし音楽データを落としてました。
あと、NPCのせりふと思しき音声データも独自形式のファイルで
1ギガ近くどしどしダウンロードさせられました…(笑)。
また、ファンタジーアースのbetaに当たったのですが、
ファンタジーアースはWMAファイルで音楽を鳴らしていますねぇ。

ところで、PlayOnlineでヴォーカル曲として忘れてはいけないのが、昔のビューアの起動画面の…
「いぇ~いぇいぇいぇ~いぇ~いえ~い…」(笑)。
幸運にも、ビューアで再生されなくなる前にWMA化しておいたので、
いつかインストゥルメンタルなあの曲を復元できるやも知れません(笑)。

「プロマシア」にしても、作曲者ご本人は「これまでの流れと同じ」と言いつつも、
変化が感じられる面もありましたから、
しれっとした顔で、何かしら仕掛けてくる可能性は充分にあると思います(笑)
とはいえ、確かに、エリア切り替え等であからさまに「音」が変わったら奇妙ですから、
今までの音ネタのセレクト・・・おそらく水田さんと岩崎さんの共同作業・・・自体は大きく変えないのでしょうか。
たとえば、メロディーのみ生楽器・・・というのが現実的な選択のひとつだと思います。

EQ2については、おそらく海外のオリジナル版仕様のままなのでしょうねー。
WMA形式も、容量が小さめなので選択肢に入りますね。

FF11の場合は、違いとして、ナローバンド対応を謳っているので、
(当方もつい最近まではナローバンダーだったので重要な点です)
大容量のやりとりには慎重であった、ということでしょう。
まあ、それでも、PS2版とWindows版の両方を使っているため、
バージョンアップ内容のダウンロードに、合わせて一晩かかっていたりしましたが・・・。

PlayOnlineの「いぇ~ええぇ~」は、そういえば流れなくなりましたねー。
PS2版だと、いまでもイントロだけ流れるんだったかな・・・
あれは、やっぱりサンプリングして内蔵音源で鳴らしているのでしょうか。
インストゥルメンタルって、いったいどうなるのか、なんだか楽しみなような怖いような・・・(笑)