2009年11月21日 05:26

演奏会まであと1日 / FFタクティクスの音楽を語ってみる

ファイナルファンタジータクティクス(FFT)演奏会まであと1日。明日です。
というかカウントダウンと言いつつ2日も抜けるってどうよ。どうですか。
仕事が立てこんでいた上にコンサート旅行準備で手が回りませんでした。
これから、新幹線に乗って最後の練習に向かいます...。

さて、いよいよ明日にせまったFFT演奏会に備えて、
CDなどで曲を聴いて予習される方もいらっしゃるかと思いますが、
その際にご参考になればと、FFTの音楽についてちょっと書いてみます。

といいつつ、こちらのポッドキャスト(英語)を元ネタに使います。

Into the Score - 23 - Symphonia Ivalice

Kenley Kristoffersonさんによる、『Into the Score』という、
いろんなゲーム音楽を聴きつつ分析していくネットラジオ番組なのですが、
その中の、FFTの音楽を取りあげた回です。


FFTの楽曲を作られたのは、主に崎元仁さんと岩田匡治さんのお二人。
『タクティクス オウガ』で作曲された方々でもあり、
ゲームそのものについても、開発元の会社こそ違うものの、
FFTと『タクティクス オウガ』は兄弟のように近い存在であると思います。
(ちなみに、現在は『オウガ』の版権もスクエニが持っているようです)

また、FFTの中に登場するミニゲームのサウンドノベルでは、
三井ゆきこさんと三浦優子さんによる楽曲も用いられていますが、
これらは、発売されているサウンドトラックCDには収録されていません。

さらに、FFTにはゲーム中で音楽だけを聴けるサウンドテストがあります。
ゲームを最初から始めて、主人公の名前を"BGMききたい"にするだけ。
すると、ゲームが始まらず、サウンドテストになります(PS版・PSP版とも)。
割と有名な裏技ですが、ご存じない方はぜひ試してみてくださいませ。
作曲者の方々による不真面目な全曲解説なども読めて、かなりお得です。
サウンドテストでは、CDには入っていない曲もかなり聴けます。
(逆に、ムービー用の曲などはサウンドテストでは聴けず、
CDのほうにしか入っていません)

もうひとつ基本的なこととして、FFTの曲名は、
発売されているサウンドトラックCDに書かれた曲名と、
ゲーム中のサウンドテストで表示される曲名とが、異なっています。
たとえば、CDの『Trisection』は、サウンドテストでは『突撃軍曹』ですが、
この場合『Trisection(突撃軍曹)』という風に、以下では曲名を表記します。


番組は、ゲームのストーリーや作曲者の2人を紹介しつつ始まります。
25分ほど経ったところから音楽の話題に入りますが、
最初に、FFTの音楽の最大の特徴として、
通常のFFシリーズでは、楽曲ごとに多様なジャンルや編成を取り入れていますが、
FFTは全体を1つの編成(シンセオーケストラ)で統一していることを挙げています。

編成の分厚さを示す例として、
『A Chapel(教会アタック)』のイントロに登場する楽器とフレーズを、
ひとつずつ紹介する部分(30分ごろから)も面白いですが、
もっとも力を入れて紹介しているのは、各キャラクターのテーマの変奏です。


ひとつのフレーズを複数の曲の中で変奏するのは、
おそらく映画音楽から取り入れられて、ゲーム音楽ではメジャーな手法ですが、
(古くはスーパーマリオブラザーズの地上面とゲームオーバー曲なんかもですね)
FFTでは(正確にはその中の崎元さんによる楽曲では)、
他に類を見ないほど広範囲に、かつ複雑に変奏されています。

特に、『主人公のテーマ(クマさん悲しい)』と『アルマのテーマ(妹の靴下)』は、
ポッドキャストによれば、合わせて17曲の中に登場するのだとか。
合わせて、と書きましたが、
そもそもこの2つのテーマ自体がそっくりなのだと指摘されています。

主人公のテーマ(クマさん悲しい) →
 敵兵襲撃(クマさんお食事中) - 0:25
 そして僕は逃げ出した(そして僕は)
 橋上の戦い(金箔) - 0:24, 1:15
 In Pursuit(戦況報告) - 0:45
 Shock!!~絶望(鼻から牛乳) - 0:33
 思い出(嬉しいクマさん)
 
アルマのテーマ(妹の靴下) →
 悲痛な心の叫び(小悪党錯乱) - 0:00(※これは違うような気が)
 Random Waltz(SMPL1.JPG)
 Bland Logo - Title Back - 0:50
 Backborn Story - 0:17
 Remnants(づんづん) - 0:45(※出だしが似ている、のだとか)
 Epilogue Movie - 0:24
 
両方 →
 Prologue Movie - 主人公1:00, 2:37 / アルマ0:47
 Antipyretic(ラムザ君の憂うつ) - 主人公0:58 / アルマ0:38, 1:19
 Staff Credit - 主人公3:08 / アルマ0:53, 1:54, 4:21
 
※ポッドキャスト記事中の"FFT - Thematic Study"(PDF)より引用(以下同じ)

主人公(デフォルトの名前はラムザですが変更可能)と、
その妹であるアルマのテーマがそっくりだというのは自然ですね。

で、面白いのは、両方のテーマが登場する『Prologue Movie』で、
『FINAL FANTASY TACTICS』のロゴがババーンと出るときの、
勇ましいフレーズのほうが、アルマのテーマであり、
主人公のテーマはというと、その直後、ちょっと切なげに出てきます。

また、ゲームを起動して最初に流れるムービー(PS版・PSP版とも)では、
『Bland Logo - Title Back』が使われていますが、
ここでもタイトルロゴが登場するときに流れるのは、アルマのテーマ。

そしてエンディングムービー(『Epilogue Movie』~『Staff Credit』)でも、
主人公のテーマが1回に対して、アルマのテーマは4回登場しています。

じつはFFTの主役はアルマだった...!?(笑)

というよりも、たぶんこの2つは、表裏一体のゲーム全体のテーマとして、
使い分けられているのでしょうね。

上の曲名一覧を見ても分かるように、全体的にも似たような分担です。
例外なのは、主人公のテーマを長調にした『思い出(嬉しいクマさん)』。
ちなみに、サウンドテストの曲名にときどき登場する"クマさん"は、
お察しの通り主人公(ラムザ)のことです。


主人公&アルマとともに、もう1組、対になっているテーマがあります。
『ディリータのテーマ』と『オヴェリアのテーマ』。
ポッドキャストでは、この2つのテーマもよく似ていると指摘しています。
主人公&アルマのように血がつながっているわけではありませんが、
ゲームのストーリー展開を考えると、この組み合わせも納得です。

オヴェリアのテーマ(女王様の靴/女王様の腕) →
 礼拝堂(お祈りクマさん)
 Prologue Movie - 0:20
 オヴェリアの不安(女王様の毛)
 サントラ未収録(女王様のベット)
 ゲームオーバー(無理っス。)
 Shock!!~絶望(鼻から牛乳) - 0:18
 ディリータのテーマ(親友の汗)

こちらは、主人公&アルマの場合とはちょっと違うのですが、
オヴェリアのテーマが様々な曲に登場していて、
その中でディリータのテーマもオヴェリアのテーマの派生形と考えられる、
という風に解釈されています。

そしてさらに、崎元さんによれば、
ここまでに挙げた主人公・アルマ・オヴェリア・ディリータの4つのテーマは、
すべて共通のテーマから派生させたものなのだとか。


ポッドキャストではその他にも特徴的なテーマがいくつか挙げられています。

・P.R. Movie
・Prologue Movie - 1:38, 2:23
・戦闘終了(勝利の巻でやんす)
・橋上の戦い(金箔) - 1:03
・ラスト戦闘終了(本当の私を見て)
・Staff Credit - 1:30

に共通して登場するテーマは、音の動きが大きく、力強い場面で使われます。


また、ゲーム中盤から登場し、
終盤に近付くにつれて使用頻度が増えてくる『聖アジョラのテーマ』。
いわば"敵役のテーマ"でしょうか。(超ネタバレですが)

・聖アジョラのテーマ(あじょらさんニヤリ)
・聖アジョラのテーマ豪華版(アジョラさん行動中)
・Ultema The Nice Body(アジョラさん大回転)- 1:22
・サントラ未収録(なぞなぞあじょら) - 0:12

このあたりは、サウンドテストの曲名もわかりやすくて親切です。


また、テーマというほどではありませんが、
『士官候補生(小躍る小悪党)』と、
『悲痛な心の叫び(小悪党錯乱)』と、
『Apoplexy(儀式のお時間/儀式のお図かん)』の1:07~のフレーズが同じ。
ちなみに、『Apoplexy』はサウンドテストでは2曲に分かれているのですが、
そのうちの『儀式のお図かん』の部分が共通フレーズに該当します。


で、ここからは筆者の解釈なのですが、
ポッドキャストの中でははっきりとは触れられていないものの、
もうひとつ、非常に重要なテーマがあると思います。

・ブレイブストーリー(アラズラムのお部屋)
・雷神シドのテーマ(シドとは)
・Epilogue Movie - 0:05

に共通するメロディーです。

そもそも、FFTのストーリーというのは、
キャラクターメイクから始まり、エンディングムービーに到達するまでの間、
後世の歴史家アラズラムが、
「これまで伝えられてきたものとは違う、本当の歴史はこうだった!」
と、延々語っている、という形をとっています。
(だから、極端なことを言うと、
FFTの物語にも、アラズラム独自の解釈や想像が入っているかもしれません)

そういう意味で、
アラズラムが"語っている"場所である、ブレイブストーリーの曲や、
同じくアラズラムの語りのバックで流れる『Epilogue Movie』は、
主人公たちのテーマの、さらに外側のメタなところにある、
このゲームの真のメインテーマとも言えるかもしれません。言いすぎか。

もう1曲の『雷神シドのテーマ』はどうなのか、というと、
アラズラムとシドの関係は、ゲームをクリアした方ならわかるかと思います。
シド、そしてその養子であるオーランは、"外側"と"内側"をつなぐ役割を持つ、
物語上、あるいみ超越した存在でもあるのだと思います。
(このお二人、ゲーム上の能力的にも超越しちゃってますが...)


長々と語ってしまいましたが、
そういったところに着目してFFTの音楽を聴くと、より楽しめるかもしれません。
というわけで、是非とも、明日のFFT演奏会にいらしてくださいませ!
...という宣伝オチ(笑)

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コメント(3)

いよいよ明日ですね。
そろそろ東京につかれて一息ついてる頃でしょうか?

PSPでFFTをやりながら楽しみにしてます。

頑張ってください!
明日、楽しみにしています。

>しろのあさん
東京について、一息つく間もなく練習に合流でした(笑)
(すでに始まっていたので…)
あと、本番までにPSP版をクリアできなかったのが心残りです(笑)

>ヘレンさん
ありがとうございます!
楽しんでいただけるように、いい演奏をしたいですねー。