いよいよ今度の日曜は『PRESS START 2009』ですねー。
すでに下の方に沈んじゃってますが、
演奏曲の予習&アンコール曲予想の記事も書いていますので、
コンサートに行かれる方で、よっぽどお暇な方はのぞいてみてください。
久しぶりに帰ってまいりました、無断でインタビューてきとー翻訳です。
Dog Ear Recordsのブログでの紹介で初めて知ったのですが、
先週、植松さんのロングインタビューが、
英語サイト『Original Sound Version』に掲載されました。
"Of Mustaches and Men:
A Circus of an Interview with Nobuo Uematsu"
http://www.originalsoundversion.com/?p=3673
多岐にわたる話題が展開されていますが、個人的に初耳な情報としては、
・『コンガボーイがやってきた』に続く第2弾シングルは8月末配信予定で、
タイトルは『Coconut Castaway』(ココナッツの漂流?)
(※8/1追記:邦題は『南の島のヤシの実物語』だそうです)
・『FF14』のほかに、(先週or今週の?)ファミ通で発表されるゲームと、
秋ごろ発表されるゲームでも曲を書いている
Original Sound Versionに掲載された、Jaysonさんのインタビュー記事は、
以前にもこれとかこれとかを勝手に翻訳しました。
例によって、怒られたら消しますがー。
植松伸夫さんいんたびゅー てきとー訳(原文公開 2009/7/23)インタビュアー:Jayson Napolitanoさん(Original Sound Version / GEM Impact)
※口調が雑なのはてきとー訳なのでごめんなさい
― 『Original Sound Version』というサイト名の意味はわかりますか?
植松: ええ、『ファイナルファンタジー(FF)』のCDの名前からですよね。
― その通りです。最近、植松さんが『FF14』に携わっていると発表されましたね。植松さんが『FF』シリーズに戻ってこられて、とても嬉しいです。
植松: ありがとう!
― しばらく『FF』から遠ざかっていた植松さんが、なぜ、どのような経緯で戻ってこられたのでしょうか。
植松: プロデューサーの田中弘道さんからオファーを頂いたので、やりますと。今回は音楽をぜんぶ自分でやります。
― 今回は『FF10』や『FF11』のように他の作曲家と分担するのではなく、全曲を担当されると。
植松: ええ。
― すごい仕事量になりますね!(笑)
植松: そうだね(笑)
― また『FF』の音楽を作るということで、どんなお気持ちですか?
植松: 2作もあけちゃったからね。その分いいものを作らなきゃって、すごいプレッシャーはありますよ。
― 今回の音楽はどんなアプローチを考えていますか?
植松: 具体的にこんな音楽、みたいなことは言われてないし、僕もアプローチを決めて作るほうじゃないから、絵を見たり、シナリオを読んだりして考えます。
― 『FF4』や『FF6』のような昔懐かしい音楽なのか、もっと現代的な『FF7』『FF8』のような音楽なのか...。
植松: 階段を登っていくようなもんで、ずっと『FF』の曲を書いてるうちに積み重ねができていくんです。聴く人は変化したと感じるかもしれないけど、僕は変化したとは思ってなくて。だから、『FF14』でもさらに次の階段を登るんじゃないかな。
― さらに進化すると!
植松: そう!(笑)
― 崎元さんの『FF12』や浜渦さんの『FF13』の曲は聴きましたか? 感想をお聞きしたいのですが。
植松: それが聴いてないんです(笑)
― かつての上司として何か言いたいことは?
植松: (笑)
― 激励とか?
植松: ダイヤの原石を見つけられたような感じで、すごく嬉しいです。
― 原石を磨く手助けもされたり。
植松: 僕がスクエニにいたころは、音楽スタッフは10人ぐらいだったけど、経験を積んでもらおうと『FF』の仕事を振ったりしてましたね。特に浜渦君は、すごく才能もあるし、自分のスタイルを作ろうという強い意志があったから、もっと曲や名前を世に出す機会を作ってあげたかったんです。
― それから...『10 Stories』ですが。
植松: ええ。
― 植松さんが作っているソロアルバムですね。以前に出されたソロアルバム『Phantasmagoria』とは、どんな違いがあるでしょうか。
植松: あの頃はニューエイジとかヒーリング音楽をよく聴いてたんですが、最近は癒されたいと思わないんですね(笑)
― (笑)
植松: だからもっと、エキサイティングだったり、楽しいものを作りたくて。
― それで、楽しい歌を集めて『10 Stories』を作りたくなった?
植松: 12、3歳のころ、歌詞をつけた歌をたくさん書いてたんですね。改めて聴くと、たぶんそのころからアルバムとか作りたかったんだなって、それを思い出して。
― それが『コンガボーイがやってきた』?
植松: 違います(笑)
― (笑)
植松: あの曲は去年作りました。49歳のときですね(笑)
― (笑) ...このアルバムはいつごろから構想していたのでしょうか?
植松: 5、6年前かな、ずっと歌詞のない曲ばっかり書いてたから、こういうこともやりたいと思って。思ってるうちにあっというまに5、6年経っちゃいましたね。
― 来年のアルバム発売より先に、1曲ずつシングルカットして販売するというのはどこからきたアイデアなのでしょうか?
植松: 僕が昔、エルトン・ジョンの新しいシングルが出るのを楽しみに待ってたような気持ちを味わってほしかったり、自分でもまた味わいたくて。昔の、シングルレコードを1枚ずつ買ってた感じって、iTunesでシングル曲をダウンロードするのに似てると思うんです。
― 私も、そういう感覚はすごく楽しいです。最初の曲が出たのはいつでしたっけ。
植松: 5月ですね。
― 毎月1曲ずつというわけではないんですね?(笑)
植松: うーん...(笑) 2、3カ月に1曲かな。次に出すのは、僕が12歳のときに作った曲です。
― 楽しみです。
植松: 8月の終わりごろに出します。
― 最近のお仕事としては『グイン・サーガ』がありましたね。初めてアニメの音楽を担当されましたが、どのように決まったのですか?
植松: 『グイン・サーガ』のプロデューサーさんが、音楽担当者を探してたときに、たまたまオフィスで流れてた『ロストオデッセイ』の曲を聞いて、「これは誰の曲だ?」って。それでお話が来ました。『グイン・サーガ』は、原作が120巻以上もある超大作だから、音楽もすごい仕事量でした。
― 123巻ありますよね! 70年代から始まって。
植松: ええ、70年代の終わりごろから。
― そんな、大変な仕事に取り組まれて。普段のようなゲームの音楽と比べて、アニメの音楽を作るというのはどうでしたか?
植松: 何も絵がない状態で曲を作らないといけなかったので、どんな風に作ったらいいのかもわからなかったのが大変でした。そんなときに、音響監督さんが、一曲の中にいろんな展開が入っていても大丈夫、こっちでうまく切って使うから、と言ってくださって、やっと安心して作れるようになりましたね。
― バンド『THE BLACK MAGES』については、去年8月のライブ以降何か動きはありますか?
植松: 今のところ決まってません。メンバーにもメールで「飲みに行こう」とか誘うぐらいで。それぞれに仕事があるから、集まって何かをする時間がなくて。
― 今後バンドで演奏したい曲は?
植松: うーん、『片翼の天使』とか...何が聴きたいですか?
― そうですね...『FF4』の『トロイア国』はどうでしょう?
植松: THE BLACK MAGESで?
― もちろん。以前に『マトーヤの洞窟』みたいな曲も演奏されていますし。あと、『FF6』のオペラシーンの最後の戦闘曲『大団円』。オペラシーンのほうをやったんですから(訳註:3rdアルバムの『Darkness and Starlight』)、こっちもやりましょうよ。
植松: そうだね、考えておきます。
― それから、去年のライブの最後に、衣装の裾をめくって、ピアノ・ソックスを見せていましたよね(笑)
植松: そうだった、そうだった!(笑)
― あれはどこで買ったんですか?
植松: だいぶ昔に買ったんですが、普通あんな鍵盤の柄のソックスを履かないですよね? あれが初めてのお披露目でした。MIDIだったらいいのにね!(笑)
― 鍵盤ネクタイよりは良さそうです(笑) THE BLACK MAGESといえば、『ロード・オブ・ヴァーミリオン』もTHE BLACK MAGESの曲に近いと思いました。
植松: あれもTHE BLACK MAGESみたいな感じですね。非公式なTHE BLACK MAGESというか。
― そういった曲を聴いても、植松さんがロックファンであることがよくわかりますね。『ブルードラゴン』の曲『Eternity』での、イアン・ギランの参加はどのように実現したのですか?
植松: 彼の知人にセッティングしてもらったんだけど、彼ももう60過ぎてるし、ちゃんと歌えるのかわからないから、他の歌手にもあたってほしいってお願いして。そのまま締め切り間近になって、先方から、イアン・ギランでいけるってことになって。だから、僕が決めたわけじゃないんだけどね。
― 植松さんは彼のファンですか?
植松: もちろん! ディープ・パープルのファンだったから。
― 彼とは直接会って曲を作ったのですか?
植松: いや、ディープ・パープルのツアーの合間で、カナダにいたときに、録音済みの伴奏と歌のガイドをPro Toolsのデータで送りました。彼が5テイク録って、「好きなものを使って」と。
― 憧れの歌手と仕事をできて、嬉しかったでしょうね。
植松: ほんとは直接会って『マシン・ヘッド』(訳註:ディープ・パープルのアルバム)にサインしてほしかったんだけどね!(笑)
― 『CELLYTHM / Those Who Distorted』についてもお聞きしたいと思います。どうしてこのようなアルバムを作ろうと思ったのでしょうか?
植松: もともと、T-Rexのような、ストリングスとエレキギターの融合みたいなことをしたかったんですが、Apocalypticaが先にやっちゃったから、そのアイデアはしばらくしまってたんです。それであるとき、「チェロでロックやってる人を知ってますよ」っていう人と会って、話が進み始めたんですね。
― ご自身の曲がビートルズの曲と並んでいるのはどう思いますか?
植松: それは考えたことなかったけど、言われてみると嬉しいね。CELLYTHMにとってのデビューアルバムってこともあるから、有名な曲も入れようと思ったんです。次のアルバムのアイデアもいろいろ考えてますよ。まだあんまり言えないけど、クラフトワークみたいなのとか、ミニマルとか。
― フルアルバムですか?
植松: そうです。
― 楽しみです。そういえば、THE BLACK MAGESのライブDVD(訳註:『THE BLACK MAGES III - Darkness and Starlight Live』)に、AnteとCELLYTHMのオープニングアクトが収録されなかったのは何故ですか?
植松: それはわからないな、小川(洋輝)君(※Dog Ear Records所属の音楽ディレクター)に聞いてみて!
― 変なことを聞くようですが、『ハリー・ポッター』はお好きですか?
植松: 映画を見たことはあるけど、特に好きではないね。そういえば、映画の『ファイナルファンタジー』のとき、本編の曲は書かなかったんだけど、デモ曲を書いていて、『ハリー・ポッター』のテーマ曲のメロディーがそのうちの1曲とそっくりだった(笑)
― 「才人は借り、天才は盗む」と言いますからね。
植松: 面白いね(笑)
― なぜ聞いたかというと、THE BLACK MAGESのライブのときの、帽子を脱いだあとの衣装が『ハリー・ポッター』のようだったので。
植松: でも、あれは『FF』の黒魔道士だけど。
― はい、でも、『FF』の黒魔道士の衣装は青ですし、黒だと『ハリー・ポッター』のように見えて。
植松: 衣装デザイナーがいろいろアイデアを出してくれたんだけど、黒がいちばん良かったんです。
― 黒のほうがロックらしくて。
植松: うん。
― まあ、ハリー・ポッターも黒魔道士みたいなものですよね(笑)
― ところで植松さんは長年、アイルランド音楽のファンだということですが。
植松: はい。
― フィドルは今でも弾かれているのですか?
植松: うーん...あんまり。
― また『ケルティック・ムーン』(訳註:『FF4』のアレンジアルバム)のような曲を作ることはありますか?
植松: 今でもアイリッシュは好きです。最初に『ケルティック・ムーン』が出たとき、評判が良くなかったんですよね。日本ではまだアイリッシュが知られていなかったし、バイオリンとかドラムの音が騒がしいと思われたみたいで。今では、好きなアルバムだと言ってくれる人も多いんですけど。
― 自分もその一人です。『FF4』といえば、『愛のテーマ』が日本の音楽の教科書に載ったりもしましたね。『FF4』の中で特に好きな曲はありますか?
植松: うーん...
― 『トロイア国』とか?
植松: ああ、好きですね。『トロイア国』。それから『赤い翼』も、いつかオーケストラ演奏をやってみたいです。
― 『トロイア国』もやってください!(笑)
植松: (笑) 言われてみると、オーケストラにも合いそうだね。やってみたいかも。
― 概念的な質問なのですが...ファミコンやスーパーファミコンの頃は、植松さんが作った音がそのままプレイヤーの耳に届いていました。でも、技術が進歩して、ゲームの中で生の演奏が使われるようになったので、植松さんだけでなく、アレンジャーやオーケストレーター、演奏家といった方々との共同作業で音楽が作られるようになっています。それによって、植松さん自身による表現が損なわれたり、曲の最終的な仕上がりをコントロールしきれないと感じることはありますか?
植松: 僕も、自分ひとりで何でもできるわけじゃないし、そういったメンバーが、僕の表現をどんどん広げていってくれるんです。それに、もし自分ひとりでできるとしても、人が集まれば、アイデアがアイデアを生んで、1+1が3になることもありますから。今の時代、一人では作れないものが多いです。チームを作れば、できることが広がっていくんです。
― でも、うちのサイトの記事を読む人は、熱心な植松さんファンが多くて、そうしたチームで作られたものは"純粋な"植松さんの作品ではないと考えているんです。
植松: 僕が自分ひとりで作ったら酷い曲になっちゃうよ(笑)
― そんなことないでしょう!(笑)
植松: 人間に例えると、僕はその子の心を作るんです。アレンジャーやオーケストレーター、ミキサーといった人たちはそれに衣装を着せてあげる。それが素晴らしかったら、また違うアレンジャーが違う服を着せてあげたりする。
― 植松さんが心を作るなら...脳は誰が?(笑)
植松: (笑)
― ともかく、今日、私たちはDistant Worldsのサンフランシスコ公演のために来ています。公演で、世界中を回ってみて、反響をどんなふうに感じていますか?
植松: いろんな国で、自分の曲を好きになってくれた人を見て、嬉しかったね。生まれてきてよかった! っていうぐらい。最近では、僕の曲を聴いてゲームの作曲をやりたくなった、って言ってくれる人もいて。僕はディープ・パープルとかエルトン・ジョンとか聴いて音楽を志したけど、自分がそういう風になれているっていうのが、すごく嬉しい。
― 興味深い話です。ゲーム音楽を作っている友人に聞いたのですが、植松さんを尊敬して作曲家を目指している人たちの多くが、植松さんのバトル曲を本当に大好きで。友人が彼らと話をする機会があったとき、「あなたたちはバトル曲を7,000曲作るために雇われるわけではありません!」と言ったとか。
植松: ラスボスの曲の中には好きなものもあるんだけど、普通の戦闘曲はそれなりかな。
― そうなのですか。でも、たくさんのファンがいます。
植松: ラスボス戦は、ゲームの最後に聴く曲だから、それだけ他の戦闘曲より気をつかうね。
― 今後のDistant Worldsツアーで演奏曲に加えたい曲は何ですか?
植松: 加えたい曲のリストがあるんだけど。
― 一番は何ですか?
植松: うーん...
― (『トロイア国』を口ずさむ)
植松: ...そうだねー。
― (笑)
植松: さっき話に出てきてから、できそうだなあと考えてるけど。
― 実現したら嬉しいです。
― 植松さんが独立してスマイルプリーズを設立してから携わった作品の中で、いちばん気に入っているものは何ですか?
植松: 『10 Stories』ですね。ゲーム音楽の場合、ユーザーやゲーム会社を満足させることが大事なんだけど、『10 Stories』では自分が気に入りさえすればいいんだから、すごく気が楽。
― リスナーではなく、植松さん自身だけが? とはいえ、『コンガボーイ』はとても良かったと思います。次の、12歳のときに書かれたという曲も楽しみです。
植松: 『Coconut Castaway(訳註:邦題は『南の島のヤシの実物語』だそうです)』だね。
― 『Coconut Castaway』ですか?
植松: (笑)
― 『10 Stories』の中で、植松さん自身が歌う曲はありますか?
植松: セリフは喋ってるけど、歌はないね。
― 歌いましょうよ、上手いのに(笑)
植松: (笑) Distant Worldsのシアトル公演では、コーラス隊に混ざって『片翼の天使』を歌ってたけどね。
― じゃあ大丈夫です。今回は4人しか歌手がいませんから、目立ちますよ。
植松: いやいや、今回は歌わないよ(笑)
― 植松さんは坂口(博信)さんと長いおつきあいですが、『ロストオデッセイ』以降ご一緒に仕事をされていませんよね。今後またご一緒されることはあるのでしょうか?
植松: 言えないことが多いんだけど、何かやってる「かもしれない」ね。「かも」。
― 『クライオン』は発売中止になってしまいましたね。
植松: そうですね。
― その時点で、すでに曲は書かれていたのですか?
植松: 正直言って、ちょっと嬉しかったんだけどね、めちゃくちゃ忙しかったから!(笑)
― これからも『FF14』や『10 Stories』でお忙しくなりますね。ほかに携わっている作品で、いまお話しできるものはありますか?
植松: 来週(訳註:取材はおそらく7/18、掲載は7/23なので、そのどちらかから起算しての「来週」)ファミ通で発表される新作がひとつと、あとは秋に...でもまだ話せないなあ。
― それはお忙しい! あと、唐突な質問なのですが、『ファイナルファンタジーVI スペシャル・トラックス』について...
植松: ああ、シングルCDの。
― 『近づく予感』という曲が入っていましたよね。
植松: 坂口さんは音楽家になりたかったみたいで(笑) 僕と一緒にCDを作りたくて、彼が歌を書いて(訳註:伊藤裕之さん作詞・植松さん作曲のはずですが...)、開発スタッフのみんなで一緒に歌って。だから記念ソングみたいなものですね。
― 良い曲です。
植松: 最初の節は坂口さんが歌ってます。3つ目の節はキャラクターデザイナーの野村哲也さんですね(訳註:3節目は合唱なので、4節目?)。聴いたことあります?
― 教会で合唱しているような雰囲気の歌ですよね。
植松: ええ。
― あとは、ゲームの未使用曲が収録されていました。ほかの『FF』ではなぜこういうものを作らなかったのですか?
植松: どっちかというと、坂口さんのシングルのボーナス曲みたいなもんだから。
― 坂口さんのための(笑)
植松: そう、坂口さんが歌ってるだけだとCDにできないから(笑)
― 世界中どこの公演でも、『片翼の天使』が演奏されないとファンが怒りだすぐらいの人気です。『妖星乱舞』も壮大な曲だと思うのですが、あまり評価されていないのはなぜでしょうか?
植松: 観客に投票してもらって、『J-E-N-O-V-A』と『妖星乱舞』も演奏されることに決まったね。
― オーケストラで『J-E-N-O-V-A』ですか? どんな曲になるのでしょうか。
植松: わからないけど。
― (イントロの下降メロディーを口ずさんで)シンセっぽすぎる気がしますね?
植松: そうでもないと思うよ。アレンジ次第じゃないかな。
― 『妖星乱舞』は...長くて、クラシック音楽のような展開がありますよね。植松さんにとって特別な曲なのですか?
植松: (ラスボスの)ケフカの姿は知ってる?
― ええ。
植松: (ラスボス戦の)それぞれのステージで別々のテーマを作りたかった。だから長くなったんです。
― それぞれが、コンサート曲の楽章のような感じでしょうか。それらが一つの曲にまとめられて『妖星乱舞』になったわけですね。
― ところで、髪がずいぶん伸びましたね。ロックミュージシャンを意識して?
植松: そうそう! ...いや、嘘だけど(笑) 人間、切る必要もなく、邪魔でもなかったら髪なんて切らないんじゃない? 現代だと、ファッションとかの理由で切ることもあるけどさ。どこまで伸ばしたら切りたくなるのか知りたいという、まあ、それだけのことですね。
― 植松さんの口ひげはある種の伝説です。天野(喜孝)さん、坂口さん、植松さん、みんな個性的な口ひげをたくわえられていて。
植松: 理由は2つあって。『FF3』のころ、坂口さんに「ひげを伸ばした方がいいと思う?」って聞かれて、「いいね!」って答えて。
― (笑)
植松: そしたら坂口さんが「よし、一緒に伸ばそう!」って(笑)
― (笑)
植松: もうひとつは、若く見えすぎて、サウンドの連中が言うことをきいてくれなくてね。床屋で「ひげを伸ばしたらいいですよ」って言われて。それが同じ時期に重なったから、理由が2つできたし、じゃあ伸ばそうかと。
― ああ、面白いですね!(笑)
植松: 伸ばしてみると、「もう剃らないほうがいいな」と思ったね。
― 髪もどこまで伸ばされるのか楽しみです(笑)
植松: (笑) 髪はバンダナで隠せるけど、ひげが伸びたらどうしようか。
― 髪の中にしまうか、ひねって巻いたらどうでしょう?
植松: それだ!(巻く仕草)
― 『クロノ・トリガー』での植松さんのお仕事についてもお聞きします。光田(康典)さんが病気になって、植松さんがサポートに入ったとのことなのですが、その際に具体的な指示はあったのですか?
植松: 休暇中だったんだけど、坂口さんから電話がきて、光田君が倒れてしまって作曲できないと。だから休暇を切り上げて仕事に戻ったんです。もともと使われるシーンとかが指定されていたので、その曲を作りました。
― それらの曲のことは覚えていますか?
植松: いや、1曲も思い出せないなあ。
― そうなんですか? 『ティラン城』などは人気があります。
植松: 僕はどっちかというとサポートだったからね。『クロノ・トリガー』は光田君の作品であって、コラボレーションとも言えないし...だからよく覚えてないんです。
― なるほど。今日はお会いできて嬉しかったです。お話を聞かせていただいてありがとうございました。
植松: こちらこそ、ありがとうございました。