“アトルガンの秘宝 OST”の楽曲

「Black Coffin」とは「漆黒の柩(ひつぎ)」。
漆黒の柩とは、幽霊船・アシュタリフ号の異名であり、そこで行われる戦闘にこの曲が使われています。
幽霊船の調査を依頼された冒険者は、幽霊船を操る謎の男を目撃し、その手下と戦闘することになります。
ただ、ここではプレイヤーが操作するキャラクターだけでなく、
コンピュータが操作する助っ人キャラクターと一緒に戦うということもあり、
それほどシビアな戦闘ではなく、イベントシーンの延長上といった雰囲気もあります。
そういった理由で、他の戦闘曲とは異なり、遅めのテンポで情景を描いている曲です。
そのほか、この不穏な曲調を活かして、クエスト中のイベントシーンでも使われている場面があります。
作曲は水田直志さん。

皇都アルザビ――

広大なアトルガン皇国領の西半分を司る首都で、高い塁壁で幾重にも護られた堅固な城塞都市。
石造家屋の屋根を連ねて通路とする多層構造の街並は、さながら迷宮のようである。
街中に散見される蛇の紋様は、皇国のシンボルである両頭の蛇王「ザッハーク」がモチーフ。
(公式サイト『アトルガンの秘宝』ページより) →公式サイト

作曲の水田直志さんのコメントは、

"『アトルガンの秘宝』で行けることになる、いちばん大きな町です。
最初にイメージ画を見たときに中東をイメージする音色を感じました。
楽曲はどこか黄昏ている感じも出しています。"
(「ヴァナ・ディール通信 アトルガンの秘宝特集号」エンターブレイン発行 より)

「Bustle of the Capital」とは「首都の雑踏」。
拡張ディスク「アトルガンの秘宝」の発売によって、新しい大陸、エラジアが増えました。
そこへたどり着いた冒険者が最初に目にするのが、アトルガン皇国の首都、アルザビ(Al Zahbi)です。
つまりこの曲は、新たな世界に冒険者を迎える曲ということもでき、
それに相応しい、今までのFF11にない印象的な音色が奏でられています。

「Delve」とは「探求」。
『アトルガンの秘宝』で追加された、ダンジョンエリアでの通常戦闘曲(パーティを組んでいる時のみ)です。
『ジラートの幻影』までの命名法にもとづけば、この曲は「Battle in the Dungeon #5」ということになります。

"「『FFXI』のバトル曲は、こういう感じ」というのがようやく自分の中で固まってきました。
これまでの通常バトル曲と構成は同じですが、
比較的長い時間聴く曲なので、プレイヤーが飽きないように心がけています。"
作曲:水田直志さん (「ヴァナ・ディール通信 アトルガンの秘宝特集号」エンターブレイン発行 より)

「Eastward bound...」とは「東方へ・・・」。

"アトルガン皇国へは船で行くことになるのですが、
その船で流れる曲『Eastward Bound...』なんかはとくにポップス調で明るいものにしました。
「これからいろいろなことが待ってますよ!」というか、プレイヤーのワクワク感をあと押しできたらいいなと。
晴れのときに船出してもらえるといちばんいいですね。"
作曲:水田直志さん (「ヴァナ・ディール通信 アトルガンの秘宝特集号」エンターブレイン発行 より)

アトルガン皇国には、現在2つの航路で船が走っていて、
ひとつは、旧大陸にあるマウラの町と、皇都アルザビの辺民街区(アトルガン白門)を結ぶ、外洋航路。
もうひとつは、アトルガン白門と、その北のアズーフ島の港町ナシュモを結ぶ、銀海航路です。

『アトルガンの秘宝』の舞台となる新大陸へ行くためには、普通は、外洋航路を通る必要があるため、
ほとんどのプレイヤーにとって、この曲はゲームの中で初めて聴く『アトルガン』新曲となったでしょう。
そしてまた、今までのFF11ではなかったタイプの曲でもあります。
この曲のおかげで、エラジア大陸の海は、いままでの海より明るいイメージがありますが、
それはまた、いままでの空より明るい、エラジア大陸の空と呼び合っているようにも思います。

「Eternal Gravestone」とは、「永遠の墓石」。
この曲は、ビシージ(皇都防衛戦)に敗北した時に流れるという話で、曲名もそれに合わせているようですが、
筆者がビシージの敗北に居合わせた時には、この曲は流れなかったので、まだ調査中です。
この曲はもうひとつ、プレイヤーキャラクターがコルセアにジョブチェンジできるようになるイベントの中、
コルセアたちの頭目であるクルタダ(Qultada)が登場する場面でも流れています。

コルセア(Corsair)とは、歴史的には北アフリカ沿岸を根城にする海賊のことだそうです。
当初「ギャンブラー」として設計されていたものが、
海外であまり印象の良くない名前と判断され、変更に至った経緯があります。

1ループが1分弱の短い曲ですが、
このようなベタな盛り上がり方をするイベント曲は、FF11では珍しいです。
特に、弦楽器単音色の、線は細いが折れないイメージは、
なんとなくコルセアというジョブのイメージに合っている気はします。
作曲は水田直志さん。

『アトルガンの秘宝』で新たに加わった、ビシージという戦闘で流れる曲です。

ビシージ(Besieged)とは「篭城戦」を意味するが、
アトルガンでは、皇都まで蛮族軍の侵入を許した時、
皇国軍より発令される第一級戒厳令によって始まる、
「市街戦」をも含む「防衛戦」の総称である。
第一級戒厳令が発令されると、現地にて武器を取って戦える者は強制的に徴用され、
皇国軍と共に皇都アルザビ防衛の任に当たることを求められる。
ただし、防衛戦といっても、
度重なる蛮族の襲撃によって、既に皇都の塁壁防衛ラインはずたずたに寸断されているため、
実際は人民街区を主戦場とした激しい「市街戦」が中心となるだろう。
(公式サイト『アトルガンの秘宝』ページ、ビシージの項より) →公式サイト

「Fated Strife」とは「宿命づけられた争い」。
その名の通り、ビシージが始まると、その場にいる冒険者は、否応なしに参加することになります(離れることはできます)。
さらに、他の戦闘曲と違い、剣を抜かなくても、その場にいるだけでずっとこの曲が流れています。
そのため、テンポも曲調も他の戦闘曲と大きく異なっています。
作曲は水田直志さん

カダーバの浮沼(うきぬ)――

アズーフ島に広がる大沼沢地帯。「カダーバ」とはイフラマド語で「迷夢」の意。
ほぼ一年を通して濃霧に覆われている陰鬱たる地だが、
密生した灌木とマコモやハス等の挺水植物からなる植生は豊かで、両棲の動物が数多く棲息している。
この一帯は、かつてアトルガン皇国とイフラマド王国の激戦が繰り広げられた古戦場としても知られるが、
今ではそれらの国々に代わり、ラミア擁する死者の軍団とナシュモのキキルン、
そして近東を拠点とするフォモルの一党が、隠然と勢力争いを繰り広げている。
(公式サイト『アトルガンの秘宝』ページより) →公式サイト

「Illusions in the Mist」とは「霧の中のまぼろし」。
ヴァナ・ディールに霧の濃い場所はたくさんありますが、
この曲が流れるカダーバの浮沼(Caedarva Mire)は、神秘的というより陰鬱で、
こちらが身を隠していても見破ってくるインプ族や、発見しづらいチゴーなど、厄介な敵の多い場所です。
他の場所と同じ敵でも、ここにいると、なぜか不気味な印象を受けてしまいます。
そういった雰囲気に、この曲が寄与しているのは、もちろんのこと。
作曲は水田直志さん。

ワジャーム樹林――

皇都の西部を覆う広大な森林。
「ワジャーム」とはアトルガン語で「豊穣なる」の意。
その名のとおり、北部バフラウ段丘と合わせて形成される大雨緑樹林帯は、
巨大な巣を作る蜂や高速翼で滞空する鳥など樹林に育まれた豊かな動物相がみられる。
以前の林内は、皇国軍の築いた監視塔と巡視隊の林道パトロールによって子供でも野苺狩りが楽しめるほど安全であった。
しかし、防衛線の崩壊した今では皇都侵攻の恰好のルートとして、その林道がマムージャ軍に利用されているようだ。
(公式サイト『アトルガンの秘宝』ページより) →公式サイト

「Jeweled Boughs」とは「彩られた木々」。
FF11の世界には、すでにロンフォールやジャグナー森林、聖地ジ・タといった森がありますが、
この曲が流れる、ワジャーム樹林(Wajaom Woodlands)とバフラウ段丘(Bhaflau Thickets)は、
それらの森よりずっと明るく、色彩も鮮やかです。
曲調も、優しくやわらかで、ロンフォールと比べても旅愁の色は薄くなっています。

「Rapid Onslaught」とは「急襲」。

アサルト(Assault)とは「急襲作戦」を意味する。
敵地に少数の精鋭部隊を送り込み、一気に敵を叩くことを目的とした作戦のことだ。
「傭兵」となった冒険者が参加するには、
まず公務代理店に行き、作戦リストを見て、自分に合った任務を選ぶことから始まる。
作戦を決めたら、次に任務完遂に必要な傭兵仲間を集める。
後は、現場に急行して敵地に潜入。さまざまな任務を遂行するのだ。
(公式サイト『アトルガンの秘宝』ページ、アサルトの項より) →公式サイト

"プレイヤーを応援する、進軍している感じを込めて、 これまでのバトル曲とは少し存在の異なる楽曲にしました。" 作曲:水田直志さん (「ヴァナ・ディール通信 アトルガンの秘宝特集号」エンターブレイン発行 より)

『アトルガンの秘宝』は、バトルを主軸においた拡張データだそうですが、
それを象徴するのが、「ビシージ」と、この「アサルト」という、2つの、新しい形式の戦闘です。
その中で、この「アサルト」は、たくさんの人がいる広いフィールドの中でモンスターを探して戦うのではなく、
あらかじめ戦闘のために用意されたエリアに、決めておいたメンバーだけで入り、
その中で様々な戦術を用いて、それぞれのエリアで定められている目的を達成するものです。
イメージとしては、『ファンタシースターオンライン』や、『モンスターハンター』といったゲームのような
「閉じた世界」を、FF11の世界の中で一時的に作るという感じです。

FF11の中でいままでなかったタイプの戦闘だけに、
そこで流れる戦闘曲も、いままでのFF11にはなかったタイプの曲です。

『アトルガンの秘宝』サービス開始から1年半ほどが過ぎた2007年9月、このような告知が掲示されました。

アトルガン聖皇により長らく禁じられていた闘獣試合「パンクラティオン」が、
熱き要望に応えて開幕の運びとなりました。
「パンクラティオン」とは、
魔獣マスターと称される人々が強化したモンスター「魔獣」を持ち寄って、
闘獣場のステージで闘わせる無差別級のリアルファイト。
噛み付き、ブレス、魔法など、なんでもありの過激なノールールで知られています。
さあ、あなたも自慢のモンスターを引き連れて、
このデンジャラスでエキサイティングな魔獣たちの祭典に参戦してみませんか?
(公式サイト『TOPICS』より) →公式サイト

「Colosseum」とは、もともとは古代ローマ時代に建造された円形競技場のことですが、
アトルガン皇国の皇都アルザビにあるものは現在、モンスター同士を戦わせる"闘獣試合"の会場となっています。
闘獣試合は、FF11においては、
冒険者同士による模擬戦"コンフリクト"、育てたチョコボを競争させる"チョコボサーキット"に続く、
3つ目の、プレイヤー同士が対戦できる要素です。(→詳しいルール

作曲は水田直志さん。音楽的には、
同じくプレイヤー同士の対戦に用いられる『Conflict: You Want to Live Forever?』を継いでいるとはいえますが、
数々の新しい試みを取り入れている『アトルガンの秘宝』の中でも一風変わった曲です。
特に後半の、2コードのみを用いたインプロヴィゼーション(即興演奏)風の展開は今までになく、新鮮な印象を受けます。

FF11のタイトル画面で流れる曲は、『ジラートの幻影』までは「Vana'diel March」、
『プロマシアの呪縛』では「Unity」(欠番になっている「Vana'diel March #3」はこの曲です)、
そして『アトルガンの秘宝』ではこの「Vana'diel March #4」となっています。
『プロマシア』以降でも、曲が最後まで流れ、フェードアウトした後で、「Vana'diel March」に切り替わります。
(ちなみに「Vana'diel March #2」はキャラクター作成時やイベントシーンで流れます)
一連の「Vana'diel March」は、この曲も含め、水田直志さんによる楽曲。

また、この曲は、ビシージ(皇都防衛戦)に勝利(つまり防衛成功)したときにも流れるためか、
「Vana'diel March」のなかでいちばん爽やかな曲だと思います。
特に最後のフルートとストリングスのからみが爽やかです(採譜はかなり怪しいというか勘です)。
タイトル画面ではさっさとメニューを選んでしまうので、ほとんどそこまで聴く機会がないですけれど...。

エジワ蘿洞(らどう)――

ワジャーム樹林の地下に広がる長大な洞窟。
つる草を始め、羊歯や粘菌、緑藻など地下世界に適応した植物が洞内を覆い、地表とはまったく異なる独特の鮮やかな景観を作り上げている。
またここは、ほとんどが海に没したとされる古代オルドゥーム文明の町があった場所として知られ、いたる所に石柱や祭壇等の遺址が残っている。
しかし獣人が勢力を増し、皇国軍による保全が廃止された昨今は、キキルンやマムージャ等による盗掘が跡を絶たないようだ。
(公式サイト『アトルガンの秘宝』ページより) →公式サイト

"光る植物や建物があったり、光る虫が飛んでいる不思議なエリアです。 ちょっと物悲しいメロディーですが、長時間聴く人の気がめいってはいけないので、 途中で明るいメロディーを加えて変化をつけています。" 作曲:水田直志さん (「ヴァナ・ディール通信 アトルガンの秘宝特集号」エンターブレイン発行 より)

「Whispers of the Gods」とは「神々のささやき」。
この曲が使われているエジワ蘿洞(Aydeewa Subterrane)は、暗く美しい洞窟です。
「蘿」とはツタやカズラのことですが、英語名とはあまり対応していない名称です。
ハープとウッドベースだけのシンプルな編成のスローテンポな曲は、落ち着いた寂しい雰囲気を作っていますが、
ここも洞窟であるからには、危険なモンスターも数多く生息しており、リラックスして聴けることは、あまりないかもしれません。